プリキス!!
話始めたのはいいが沈黙が続いた。
だって俺は、好きなことなんて何もなくて。
ただ1日1日を何もせずに浪費していたのだから。
それに気がついたのだろう、父さんはふわりと笑って、気にすることはないよと言った。
静かだけど、何だか穏やかで。
ずっと父さんがいてくれればいいのに、と出来もしない事を祈ったりもした。
丁度、メイン料理が出され始めた時であった。
「ましろおじさまぁーー!!!」
遠くで声がしたのだ。
きっとそれは「ましろ」じゃなく「まひろ」だろうと訂正を入れたいが、幼い故に舌足らずだったのだろう。
突然の子供の声に姉貴と俺は戸惑うも、父さんは楽しそうに笑っていて。
「志乃、吉良。ちょっとおいで。」
食事を中断し、父さんに導かれるまま、エントランスに続く大階段を降りる。
「ましろおじさま、こんばんは。」
「初伊、大きくなったね!」
階段を降りゆくと見えた2つの人影。
小さい女の子と、大人の女の人だ。
父さんに抱き抱えられて喜ぶ小さい女の子。
俺すら抱っこしてくれなかったのに、他所の家の子を抱くなんて……と俺は嫉妬していた。
それが初伊と俺の初めての出会いだった。
「急にごめんなさいね。日本に帰る前に、真尋の所には寄りたくて。
多忙な貴方だから、会社にいると思ったんだけど、電話したら今家居ると聞いたものだから。」
「ミイと初伊ならいつでも来てもらって構わないよ。兄さんはお断りだけど。」
「智秋が泣いちゃうわ。知ってた?あの人意外とブラコンよ?」
クスクスと笑いあう女の人と父さん。
それは、父さんは母さんと会話している時よりずっと楽しそうで。
姉貴を見れば、誰か知ってる?と口で合図された。
だけど答えを知りもしない俺は、首を降る。
その時。
ふと足に、何か違和感を感じて。
そちらの方を見れば、俺の太ももを掴んで立っている何かがいる。
「っ?!」
そこにいたのはさっきの幼女だった。
よくよくそいつの顔を見れば、目は透き通る青。
市内に行けば珍しくない青色だけれども、そいつの宝石のような美しい色に、俺は見入ってしまった。
「ねぇ、ねぇ!」
「な、何?」
「ういね、ういって言うの!」
俺の太ももを掴んで屈託なく笑う小さいそれが、まさか妹になるとは思いもよらなかったけど。