プリキス!!








「先輩、生徒会大丈夫ですか?」


「ああ。志乃には腹痛で遅れるって言っておいたから。」


申し訳ない……。


「ううう……ごめんなさい。」



「いーのいーの。こんなに天気もいいし、ずっと生徒会室に居っぱなしじゃ勿体無いからね。あ、ここ段差あるから気をつけて。」



学校から出て、暫く歩いたなぁと言ったところで天音先輩はねぇと声をかけた。




「初伊はさ、もう吉良の事、お兄ちゃんって呼ばないの?」


天音先輩に出会った頃は、吉良を“お兄ちゃん”って呼んでいた。




だけどある日を境に呼べなくなった。

お兄ちゃんの吉良はいなくなってしまったから。



「呼びません。というか呼べません。」



「吉良は初伊、大切にしてると思うよ。」

「長年の情で良くしてくれるだけです。」



もう、そんなこと言わないのー、と天音先輩は屈んで私に目線を合わせる。




「ごめんね、重い空気にしちゃった。でもこの話題をふったこと、後悔してないよ。初伊、そうでもしなきゃ吉良の事、考えないでしょ?」



「Sですよね……。」




そうしてたどり着いた景南高校。




気をつけてね、という天音先輩に見送られ、私は予め持ってきていた大きめのパーカーを1枚羽織り、一歩踏み出した。


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