プリキス!!
*
「先輩、生徒会大丈夫ですか?」
「ああ。志乃には腹痛で遅れるって言っておいたから。」
申し訳ない……。
「ううう……ごめんなさい。」
「いーのいーの。こんなに天気もいいし、ずっと生徒会室に居っぱなしじゃ勿体無いからね。あ、ここ段差あるから気をつけて。」
学校から出て、暫く歩いたなぁと言ったところで天音先輩はねぇと声をかけた。
「初伊はさ、もう吉良の事、お兄ちゃんって呼ばないの?」
天音先輩に出会った頃は、吉良を“お兄ちゃん”って呼んでいた。
だけどある日を境に呼べなくなった。
お兄ちゃんの吉良はいなくなってしまったから。
「呼びません。というか呼べません。」
「吉良は初伊、大切にしてると思うよ。」
「長年の情で良くしてくれるだけです。」
もう、そんなこと言わないのー、と天音先輩は屈んで私に目線を合わせる。
「ごめんね、重い空気にしちゃった。でもこの話題をふったこと、後悔してないよ。初伊、そうでもしなきゃ吉良の事、考えないでしょ?」
「Sですよね……。」
そうしてたどり着いた景南高校。
気をつけてね、という天音先輩に見送られ、私は予め持ってきていた大きめのパーカーを1枚羽織り、一歩踏み出した。