プリキス!!


きっとその子は、俺達には気づいておらず、無意識に言ってしまったらしい。


何故なら……。




「ふ、副総長達?!」


うっかり目が合ったかと思えば、凄い勢いで後ろに下がっていったから。





「よっ、人質。よく逃げ出せたねぇ。一応あんたの部屋の前には数人の見張りは付けておいたんだけど。」


「頼めば退けてくれたわ。」


「ったく。あいつらってば、ちょーっと美人だと思えば甘くなるんだよ。どう思う?身近にこんな美女がいるのに!」




美女っていうか……男だろう、お前。

きっと橘も片桐もそう思ったが黙っていた。

春瀬を怒らせたら、うるさいから。

怖いとかじゃなく、キャンキャンと鳴く犬のような、という意味で。






「で、その子はどちら様ですか。」



春瀬が美女とかそういう話から脱する為に片桐は話を変えた。

大方、北原の数多いる彼女だと予想は付いているのだが。





「この子、俺の見つけたアオ。」

「え。」

「は?」

「……?」




おかしい。

俺の知る限り、アオは初伊だ。


南校生のつけたブル目ちゃんというあだ名があまりにもダサすぎて、初伊がどうにか他の呼び方にしてくれと願って出来た妥協案がこれだったはずだ。



「鈴原美蒼サン。自称アオさん。」



春瀬の気持ちのこもっていない……というか悪意しかこもっていない紹介に、彼女は身を縮こませる。



鈴原美蒼。

確かに“アオ”の条件に随分一致してるなと思った。




見た目の条件は、世に知られている所ではかなり揃っている気がする。

けれど初伊とは違い、“華やか”という言葉が似合いそうな感じで。



ああ、そうか。

世の中の人が思う、総長共を腰抜けにさせたらしい女っていうのはこういう派手な女性か、と納得した。




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