プリキス!!
「自称アオって事は……う……じゃなくて、あの人の偽物って事っすか。」
初伊と言いかけ、片桐はギリギリで踏みとどまる。
“偽物”と言う言葉に、彼女はギリっと歯ぎしりをした。
「確かに偽物だけど……。私は出会いが無かったからで……もしもっと早く会えてたらきっと……!」
「ないね。」
彼女の期待をへし折ったのは、橘。
さっき満面の笑みで初伊と抱擁を交わしてた時と比べたら、別人のような冷たい表情だ。
「少なくとも、あんたにめぐは無理だと思う。」
「同じく美琴先輩もきっと無理っすよ。」
橘に同調するのは片桐。
「無理無理無理無理」と手を横に振る。
「めぐと付き合ったら、上手くやらないと生命の危機にさらされるよ。」
「美琴先輩が欲しかったら、全身全霊で熊ヤンキー相手に右ストレートを決めれないと☆」
橘と片桐のその言葉に、「は……?」と声を漏らした鈴原。
疑惑の部分は恐らく「右ストレート」だと思う。
教えたのは俺と姉貴だが……。
うちの妹は一体何処で誰に何をやらかした。
「ま、要するに、あいつらはそんじょそこらの女には靡かないって事でしょ。」
話をまとめたのは春瀬だ。
更に付け足すように、「そもそも何であいつらに好かれたいと思うんだか」と不満の声をもらす。
「……俺も常常思います。あんな危険人物達がなんでモテるのか。」
「うん。強いていうならめぐも他の総長達も“悪役”だよね。ヒーローに倒される側だ。」
「魔王、なんてのも良くないっすか。」
「どっちにしても、好かれたくないよね。俺が女の子だったら死ぬ気で拒否する。」
「「同じく。」」
待て。
お前らが死ぬ気で拒否したがってる状況に今うちの妹は陥ってるのだが。