プリキス!!
真央は、歪んでしまったのだと思う。
本当に昔は、外で走り回る事が大好きな普通の少年だったのに。
気付けば真央は、母と四六時中いたせいか、彼女に似てきた。
元々容姿も母寄りの真央であるから、それはもう男版烏丸真子であるかのように。
母は線の細い人だ。
言ってみれば儚いと同意語。
儚いように見える毒花に一体どれ程の人が苦しめられてきただろう。
壊れた真央を、病的な程慈しむ真子。
喜びだとか、幸せだとかを捨てた真央。
どちらも、初伊にとっては逃げるべき相手である。
「何の為にもう一度“兄”になったと思ってる。」
それは西巴に言ったのではなく、俺の独り言。
何の為にあいつの側にいることを決めた?
近づくなという真央にまで逆らって。
側で守る為だろう。
何があってもすぐに助ける為だろう。
「俺にとって一番怖いのは、天変地異でも家族の汚職をスクープされる事でもない。ただ初伊が居なくなる事なんです。」
西巴は言う。
「あの子は気付けば消えそうで、怖い。自分の命を、いとも簡単に誰かにあげそうで怖い。」
静か過ぎて、夜に溶け込んでしまいそうな西巴の“恐怖”。
本当に現実になってしまう気がして、自然と拳を固く握っていた。
「気付いているでしょう。知らずのうちに飲まず食わずで三日、なんて……初伊は自分を如何に軽んじているか。」
「…………。」
「ちゃんとしてくださいね、お兄さん。でないと俺……あの子の為に何をするか分かりませんから。」
その言葉を最後に電話は切れた。
なんとなく眠れない夜だったのに。
本格的に眠れなくなってしまったじゃないか。