プリキス!!







「はい、あーん。」



そう簡単に恵の好きにさせるもんか。

そうは思うものの美味しそうな献立に一瞬迷う。


サンドイッチは、大好きな桃のジャムのものや、お肉の入ったもの、野菜の入ったものと色々あった。

これは問題ない。

左手でパクッといってしまえばいいからね。



問題は……付け合せの豆のソテーだ。

つやつやしていてとても美味しそうなソテー。

実は豆も私の大好物だったりする。


……のだけど。





私の聞き手は右手だ。

豆は小さめ。

左手じゃ、お箸で上手く掴めないよね。




それに対して同じく利き手が右手な恵は、いとも簡単に豆を掴む。

ツルツルと取れずにいたところ、「はい、あーん」だ。



敢えてこの献立にした事に恵の何らかの策略を感じる事は置いておくとして。

別に、恵から食べさせて貰ったことが無いわけではないし、私自身うっかり人に「どーぞ」と所謂あーんをしてしまった事だってある。

だから、どうってことない行為って言ってしまえばそうだ。


そうなんだけど……!




『今はそれでいいけど……今にそんなんじゃ足りないようにしてあげるから。』




頭の中であの時の恵のセリフがリフレイン。

何恵なんか意識してるの私……!なんて思うけど、あれだけ照れくさい事言われたんだ。

何だかドキドキしてしまうのも仕方が無い事だと思う!







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