プリキス!!
恵と私は横並びになって座っている。
手錠を付けられたら必然的に横並び以外の座り方は出来そうにないからそれは仕方が無いとして。
問題は恵の態度!
「ほら、こっちむいて。口開けて……。」
ちょっと反抗して、恵から顔を逸らしていたんだけれど、その声に彼の方をちらりと見れば。
眩しいほどの微笑みを浮かべている。
例えるならば、外でこの笑顔の恵が立っているだけで小鳥が寄ってきちゃうような、そんな特殊な事態だって有り得ちゃう位のキラキラ感だ。
何なの!
何でこんなにこの人ご機嫌なの!
恵がご機嫌になってキラキラすればする程何故か直視出来ないから、キラキラするのはやめて欲しいんだけど……。
「恵……。」
「ん?」
「楽しいの?」
「楽しいっていうか、嬉しいの。」
恵は今、屈託の無い笑顔を向けてくれていて。
前この家に来たときとは大違いの“今”というこの時間。
『もう俺、死んでもいいよね?』
何処か遠くを見て、そう言っていた彼とはもう似ても似つかない。
「恵。」
「んー。」
「やっぱり、食べさせて?」
「ふふ……。はい、どーぞ。」
ねぇ、恵。
いつの間にか、私の中の恵は笑ってる恵ばっかりになっちゃった。
そしてそれが何だか嬉しくて、でもたまに恥ずかしいんだけど、
また恵の笑顔が見たいから、恵の言う事を聞いちゃうみたい。
恵の笑顔が、大好きなんだ。
笑わせたいんだよ。
「、うっそだぁ。」
突然のその言葉に恵はちょっと焦ってどうしたの?と聞いてくれた。
でも、言えるわけない。
自分の思考にハッとしたの。
困った。
恵の笑顔が大好き、だなんて。
笑わせたい、だなんて。
まるで、まるで少女漫画の主人公みたいな事考えるなんて、
不覚。