プリキス!!
「っ……。」
嫌だ。
怖い。
行きたくない。会いたくない。
知ってるの。
真央君は、真央君の全てをかけてでも私を不幸にしたいってこと。
真央君は分かってる。
陰飛羽での生活が、私にとって一番幸せな事くらい。
この優しい日々に終わりを告げるのは、もしかしたらすぐかもしれない。
この夏、お屋敷に行けば、そこから帰ってこられないかもしれない。
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
でも。
花京を。
私の家族を守れるのは、私だけ。
「初伊……。」
急に黙った私を不審に思ってか……もしくは全てを知っていてか、恵は私に声を掛けた。
「何でもない。」
私はそうやって嘘をつく。
嘘をつかなきゃやってらんない。
微笑みを浮かべて言えば、恵はぐいと私の肩を抱き寄せて、恵の肩に私の頭を載せる。
そして感じた温もりは、私の右手。
ギュッと繋がるその手に、何だか安心感を感じて。
「知ってる?」
「え?」
「初伊は寝不足なんだよ。」
……それは知ってるかも。
今日は恵に起こされたから、寝不足って言えば寝不足だ。
「だからさ、寝ればいいよ。」
顔は見えないけど、優しい声だった。
それから、何だか手で髪を梳かれているとうっとりと眠くなって。
さっきまで寝てたくせに、また眠くなってきちゃって。
「お休み」と。
意識を失う直前に恵の声が聞こえた。