プリキス!!
逃げた。
私は逃げて。逃げて、走って!
後ろからは、立ち止まったら飲み込まれそうな黒が追いかけて、私は逃げるんだ。
長い長いトンネルの先。
ようやく見えた光。
「────初伊。」
恵が手を伸ばして、笑ってくれている。
「恵!!」
私も精一杯手を伸ばして、恵の手を掴みとろうとするけれど。
「ウイチャン。クルシンデヨ───。」
暗がりに、捕まってしまう─────
「っ、めぐみっ!」
「わっ。」
私はどうやら、飛び起きていたらしい。
急に名前を呼ばれて恵も驚いただろう。
申し訳ないね。
あれは、夢だ。
夢で……良かった。
結構最近、ああいう夢を見るから、困っちゃうんだよね。
やっぱり、帰省の時期が近づいてきてるからだろうけど。
ふと視線を下に向けると、あんなに重量感のあった手が解放されていた。
そう、手錠が外れていたんだ。
更には私はさっきまでいたソファーに横になっていて、毛布まで掛けれていた。
「ありがとう。」
布団のお礼を言うために目線を上げて、恵の方を見る────
が、目に入ったのは、さっきまでのお洒落Vネックではなく薄黄色のパーカー。
白いジーンズではなく、誠凛の制服。
「烏丸、大丈夫?」
「橘?!」
思案顔の橘だった。