プリキス!!
うっかり寝入った時には確実にいなかったはずだ。
もしいたのなら、きっと橘は現代に生きる忍者なんだろう。いや、そうに違いない。
“陰飛羽に棲む!現役高校生忍者参上!”なんて番組が一本作れそうだなと思った。
「昼頃から。もう、びっくりしたんだからね。」
俺の苦悩を聞いて!!
そう力強く言うする彼は力強いんだけれども、疲れ果てたようにも見えた。
「俺は、いつも通り連盟に来ない恵を迎えに此処に来た。」
「いつも通りなのね……。」
やる気ない総長すぎて副総長が可哀想だ。
ちなみにお兄ちゃんも夜白には相当苦労掛けられたと言っていたし、蛍君も会う度に「美琴せんぱーい!」って美琴の無茶難題に泣いてるから、きっとどこの副総長も可哀想な目に合ってるんだろう。
“陰飛羽の憧れ”がそんなんでいいのか。
笑顔は引き攣るばかりである。
「いつもはチャイムを押したら基本は渋々出てくれるんだけど、今日は何度押しても出なかった。だから、俺は鍵を開けた。」
「……合鍵でも持ってるの?なんだかその言い方だと……」
「針金で開けたよ?」
何でもない事のように橘は言う。
けれど、よく考えるのよ初伊。
どう考えても普通の男子校生が針金で家の鍵を開けられる訳がないでしょう。
そして、そもそも針金常備がおかしいよね。
橘は現代に生きる忍者だという線が濃厚になった。
「俺が行成に合鍵なんて渡すわけないでしょ。想像するだけで気持ち悪い。」
私の合鍵を渡したのか疑惑を聞いていた恵は、顔を歪ませてそう言い放つ。
ひっどい言い草、と橘は言ったものの、しばらく考える素振りを見せて、それから「確かに合鍵を渡しあう男子高校生はナイ。」
橘も首を横に振ったのだった。