プリキス!!












恥ずかしいね、きゃは。


─────なんて言ったことを撤回しようか。






「ちょ、スピード落としてぇぇぇ!!」

「なに言ってるか全然聞こえなーい。」






耳元で叫べば聞こえるだろうにシラを切るソイツは、あんなおっそろしい運転の後でも平然としていた。

それに対し私は地面にへばっている。



だって……あれ、制限速度を超えていたのは疑うまでもないとして、信じられないスピード出てたよね。

バイク初心者の私にとっては、安全ベルトをつけずにジェットコースターに乗るような無謀な挑戦だった……。


「帰りは、お願いですからゆっくりお願いします。」





へたりこんだまま恵にお願いすれば、恵はしゃがみこんで私に目線を合わせる。



「ゆっくりでもいいけどー……行きと同じ位ギュッとして?」

「……それが目的かい!!」



クスクスと笑い声。

目的の為に手段は選ばないのは知っていた。

けれど、それのせいでここまで死にかけるとは思ってなかったよ!!






バイクは、飛ばしておおよそ30分は走り続けた。

ずっと目を瞑っていたからここが何処か分からないけど、陰飛羽であのスピードで、30分走り続けたのなら、かなり端のほうにいるのだろう。


あたりを見渡せば、少し汚れた感じの、古めかしい建物が並んでいた。

《宮村工具店》だとか、《カナザワメガネ》だとか。

所謂昭和レトロという感じのお店。




陰飛羽は多額の寄付金と、国からの支援金により、お金が有り余っている。

それ故建物は皆、傷ひとつないピッカピカだ。

だから、こんなお店あったんだーと1人考えていて。



「此処何区?多分、10番通りだよね。」

「湧泉町の都市部かな。」

「ゆうせんちょう……」



私の考えは、大きく外れる事となる。

湧泉町。

陰飛羽のある山を降りた麓の町だ。

かつて夜白と行ったファミレスも此処だった。

へぇ、湧泉町なんだぁ……



「って、ちょっと待ったぁ!」



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