プリキス!!
*
恥ずかしいね、きゃは。
─────なんて言ったことを撤回しようか。
「ちょ、スピード落としてぇぇぇ!!」
「なに言ってるか全然聞こえなーい。」
耳元で叫べば聞こえるだろうにシラを切るソイツは、あんなおっそろしい運転の後でも平然としていた。
それに対し私は地面にへばっている。
だって……あれ、制限速度を超えていたのは疑うまでもないとして、信じられないスピード出てたよね。
バイク初心者の私にとっては、安全ベルトをつけずにジェットコースターに乗るような無謀な挑戦だった……。
「帰りは、お願いですからゆっくりお願いします。」
へたりこんだまま恵にお願いすれば、恵はしゃがみこんで私に目線を合わせる。
「ゆっくりでもいいけどー……行きと同じ位ギュッとして?」
「……それが目的かい!!」
クスクスと笑い声。
目的の為に手段は選ばないのは知っていた。
けれど、それのせいでここまで死にかけるとは思ってなかったよ!!
バイクは、飛ばしておおよそ30分は走り続けた。
ずっと目を瞑っていたからここが何処か分からないけど、陰飛羽であのスピードで、30分走り続けたのなら、かなり端のほうにいるのだろう。
あたりを見渡せば、少し汚れた感じの、古めかしい建物が並んでいた。
《宮村工具店》だとか、《カナザワメガネ》だとか。
所謂昭和レトロという感じのお店。
陰飛羽は多額の寄付金と、国からの支援金により、お金が有り余っている。
それ故建物は皆、傷ひとつないピッカピカだ。
だから、こんなお店あったんだーと1人考えていて。
「此処何区?多分、10番通りだよね。」
「湧泉町の都市部かな。」
「ゆうせんちょう……」
私の考えは、大きく外れる事となる。
湧泉町。
陰飛羽のある山を降りた麓の町だ。
かつて夜白と行ったファミレスも此処だった。
へぇ、湧泉町なんだぁ……
「って、ちょっと待ったぁ!」