プリキス!!
「急に叫ぶからびっくりしたよ。」
飄々と、奴は言う。
でもね、叫ばずにはいられない驚き具合だったんだよ。
「本当に、陰飛羽じゃないの?」
「気づいてなかったの?」
「それどころじゃなかったよ!」
恵が言うには、山を丁度降りきったところ、湧泉町の入り口には《ようこそ!アルパカとピーマンの町、湧泉町へ!》とかいうやたらポップな看板があったそうな。
話を聞いて、へぇと思う。
ここって、アルパカとピーマンが特産物なんだね。初めて知ったよ。
オレンジ色に染まりつつある空を仰ぐように上を見れば、そこには木々に囲まれた大きな山が見える。
木に隠れて見えないが、そこの奥深くが陰飛羽町。わたし達の住む街。
陰飛羽がここにある事は、基本卒業生等関係者しか知らない。
生徒を守る為に、なんて言うけど……あんなに広く見える陰飛羽の町は、ここから見たらなんだかあっけなく、小さく見えた。
恵の方に向き直る。
一応、一応望みをかけて聞いてみることにしよう。
「外出許可証、取った?」
「ふふふ。」
「はい、笑顔で誤魔化すの禁止!!」
その反応的に、取ってないのは確かだ。
陰飛羽外への無断外出は二回目になる。
お姉ちゃんが知ったら卒倒しそうな不良少女ぶり……
隠し通そうと決意した。
バイクを、近くにあった小さな駐車場に恵は止めた。
そして、受付のお兄さんに何やら聞いているのを遠くからぼうっと見る。
……やっぱ、無駄に整ってるんだよねぇ。
《烏丸》という立場上、芸能人にはパーティなんかで割と会えるんだけど。
人気俳優なんかも、お兄ちゃんと並ぶとオーラも見た目もお兄ちゃんが圧勝していて泣きそうになっていた事を思い出した。
恵も、その類だよね。
飴色の髪が夕暮れに混ざって、いつもより一層作り物のように綺麗に見えた。