プリキス!!
「行くよ。」
「えっ、あ、はい!」
反応が遅れたのは、ぼうっとしていたから。
気づけば恵は目の前まで来ていて、私に声を掛けた。
まるで湧泉町民のようにスタスタと歩く恵に何処行くの?と聞いたら、
「きっと初伊の、大好きなとこ。」
そう返されたので、心が踊る。
もうね、規則は破っちゃったんだよ。
楽しんでも楽しまなくても事実は変わらないなら楽しみたいと思って、足取りは軽く恵の横を歩く。
歩くこと10分。
「うっ、わぁ…………。」
たどり着いたのは神社。
しかしそこはいつもの落ち着いた雰囲気の神社ではなく、屋台が立ち並ぶ活気づいた神社だ。
これって……お祭り……。
「好きでしょ?」
顔をのぞき込む、大きな目。
いたずらが成功した子供のように微笑む恵に、私は大きく首を振って頷いた。
「はぐれ防止。はいどうぞ。」
「どうも……。」
差し出された手を取って、二人で並んで歩く。
度々、というかかなりの頻度で女子達が恵をみてきゃあきゃあしていた。
ついでにいうと、大勢の男の人達もザワザワしていたから、恵は罪作りな男だと思う。
お祭りに来たのは、人生で2回目だった。
一回目は、まだ小学校に上がった頃何故か真央君と。
正直どんな会話をしたとかは全然覚えていないけれど、真央君と二人でお祭りに行った事実は覚えていて、昔の私はどれだけ肝が据わっていたのだろうと震えるレベルだ。
「恵!見て!林檎飴!」
「お嬢さん、美人さんだねぇ。サービスするよ!」
「えっ、いい人!」
チョコバナナ、型抜き、射的……
ものっすごく楽しくて、恵を連れ回してしまった。
多分、2時間位そこにいたんだと思う。
「さて、そろそろ時間か。」
恵が腕時計を見て言った。
もうそんな時間か、なんて残念に思ったけれど、仕方がない。
「行こっか。」
少し早歩きで恵は人混みを避けるようにして何処かへ向かう。
駐車場とは真逆なような気もした。
けれど、恵の後をただ私はついて行ったんだ。