プリキス!!
初伊、と今まで黙っていた恵が私の名前を呼ぶから、私は感謝を口にする。
「恵……ありがとう。」
恵の行動はどれも突拍子がなさすぎて、私は文句ばっかり言っていたけれど。
その行動に今日は励まされ続けた。
私が笑えば、恵も微笑む。
そして花火にかき消されそうな位静かな声で、呟くのだ。
「約束して。」
「約束?」
「我が儘を言うんだよ。聞き分けのいい子じゃダメだからね。」
我が儘を言えだなんて。
聞き分けのいい子じゃダメなんて。
普通だったら逆の事を恵が言う。
「……変だよ、そんなの。」
「どうして?」
「我が儘なんて言えないよ、だって……」
だって言ったら、嫌うでしょ?と。
続くはずの言葉は続かない。
向かい合っていた恵との距離が縮まって、肩に重さを感じて。
超近距離に彼の顔がある。
動揺して言えなかったんだ。
「言えない、じゃなくて言うの。分かった?」
「っ、分かった。分かったから!」
無駄に甘い声が、脳内でリフレインして。
早く離れて欲しくて、分かったと繰り返す。
その様子が面白いのか、恵はクスリと笑って。
「いい子だね。」
────カプリ、と。
暖かい耳元に、声にならない悲鳴を上げる。
齧られた……!
ボンっと顔が赤くなるのを感じるし、心拍数は急上昇。
ドキドキして、花火どころじゃない。
どうしてくれる、馬鹿恵!