プリキス!!




「嫌いだなぁ、そういうところ。」



真央君は目を細めて、何かが気に入らなさそうな顔で見る。

彼の言うところによると、聞き分けがいいのもつまらないだとか。

訳わからないよね。

頷かなければアウトだし、そうしたら頷けば不機嫌になるし。

この人は私にどうしろって言うんだろうか。





「本当に、ウイちゃんが大嫌いだよ。」


そう言って、真央君はドアを開ける。

部屋の外には、彼と同じ歳位の無表情な男の人と、何故か不気味過ぎる狐面の男の人が待ち構えていた。

「帰るぞ」

真央君はそう一声、その人達に声をかける。



………………あ。




「真央君。」

「……何?」



真央君も、自分が嫌われているのを分かっているのだろう。

私が引き止めると、まさかという顔をした。




「真央君、誕生日おめでとう。」




さっきね、時計を見ると12時過ぎだったんだよ。

私にとって嫌いな人でも、その人にとっては大切な日だろうから、おめでとうと言った。

初めはポカンとしていた真央君だが、徐々に嫌そうな顔をして、無反応。

荒々しくドアを閉めて、今度こそ帰っていった。




私はベッドにダイブする。



……まさか部屋にいるとは、思わなかったよね。

頭の中で、1人反省会をしようか。




最期のあの一言は余計だったかもしれないね。

真央君が、何も言わなかった。

私の経験上、あの人はよく喋る。

話す言葉の大抵が罵倒の言葉なんだけど、ボキャブラリーに富みすぎだろうって思うほどに口達者だ。

なのに……その真央君が口を開かなかったとか、相当不愉快にしてしまったに違いなくて。


───ああ、やってしまったよ………………。




「早く、帰りたいなぁ。」




陰飛羽に帰りたい。

お姉ちゃんの所に、帰りたい。

皆に会いたい。

橘に会いたい。

……恵に、会いたい。





何言ってるんだろう。

真央君が絡むとどうしようもなく弱気になってしまう。

そんなんじゃダメだよ、私。

花京初伊は、そんなに弱くないはずだ。

そんなに弱いなんて、許されない。



「……私。弱くなったよね。」


あの人達が優しすぎて、あったかくて、眩しすぎて、私は幸せ過ぎたんだ。

そんなんじゃダメだって分かってる。

でも……。



まだ、そこにいたいと。

あの人達の側にいたいと思うのは、罪なのかな。



いざ、離れる時が来たら私は。


私は────────────









< 420 / 422 >

この作品をシェア

pagetop