プリキス!!
「嫌いだなぁ、そういうところ。」
真央君は目を細めて、何かが気に入らなさそうな顔で見る。
彼の言うところによると、聞き分けがいいのもつまらないだとか。
訳わからないよね。
頷かなければアウトだし、そうしたら頷けば不機嫌になるし。
この人は私にどうしろって言うんだろうか。
「本当に、ウイちゃんが大嫌いだよ。」
そう言って、真央君はドアを開ける。
部屋の外には、彼と同じ歳位の無表情な男の人と、何故か不気味過ぎる狐面の男の人が待ち構えていた。
「帰るぞ」
真央君はそう一声、その人達に声をかける。
………………あ。
「真央君。」
「……何?」
真央君も、自分が嫌われているのを分かっているのだろう。
私が引き止めると、まさかという顔をした。
「真央君、誕生日おめでとう。」
さっきね、時計を見ると12時過ぎだったんだよ。
私にとって嫌いな人でも、その人にとっては大切な日だろうから、おめでとうと言った。
初めはポカンとしていた真央君だが、徐々に嫌そうな顔をして、無反応。
荒々しくドアを閉めて、今度こそ帰っていった。
私はベッドにダイブする。
……まさか部屋にいるとは、思わなかったよね。
頭の中で、1人反省会をしようか。
最期のあの一言は余計だったかもしれないね。
真央君が、何も言わなかった。
私の経験上、あの人はよく喋る。
話す言葉の大抵が罵倒の言葉なんだけど、ボキャブラリーに富みすぎだろうって思うほどに口達者だ。
なのに……その真央君が口を開かなかったとか、相当不愉快にしてしまったに違いなくて。
───ああ、やってしまったよ………………。
「早く、帰りたいなぁ。」
陰飛羽に帰りたい。
お姉ちゃんの所に、帰りたい。
皆に会いたい。
橘に会いたい。
……恵に、会いたい。
何言ってるんだろう。
真央君が絡むとどうしようもなく弱気になってしまう。
そんなんじゃダメだよ、私。
花京初伊は、そんなに弱くないはずだ。
そんなに弱いなんて、許されない。
「……私。弱くなったよね。」
あの人達が優しすぎて、あったかくて、眩しすぎて、私は幸せ過ぎたんだ。
そんなんじゃダメだって分かってる。
でも……。
まだ、そこにいたいと。
あの人達の側にいたいと思うのは、罪なのかな。
いざ、離れる時が来たら私は。
私は────────────