プリキス!!
天音は椅子越しに私の顎をクイッと手で押し上げ、上を向かせた。
視線がぱちりとぶつかる。
「志乃といたかったんだよ。」
ふふ、と笑う彼に、
「はいはい。」
と一言だけこぼして、そのまま私達はふわりと掠めるようなキスをした。
「……初伊の匂いがするわ。」
「……シスコンも度が過ぎると恐ろしいよね。」
顔を近づけると本当に少し、ほのかに甘い香りがして、私はそれをよく知っている。
大好きな大好きな、宇宙一可愛い妹の香り。
「初伊と何処に行ってきたの?トイレなんて行ってないのでしょう?」
ずるいわ!と膨れると、天音は困ったような顔をした。
「んー……詳しくは言わないけどー、志乃、初伊の事よく見ておいた方がいいよ。
……南城夜白と関係あるみたいだ。」
・・・。
「……嘘よね?」
「本当。」
南城夜白。
馬鹿な弟を不良の道に本格的に引きずり込んだ張本人。
歴代の東西南北連盟総長達の中でも郡を抜く色気と容姿で、オンナ遊びも激しいという噂の、狼みたいな男だ。
「……あー、もう、本当にっ。初伊は危ないのに好かれるんだから。」
橘行成も、西巴恵もいい例だ。
初伊は、可愛い。
何が可愛いって、外人のような青い目に、純日本人のような黒い長い髪も麗しいし、
声も凛としていてずっと聞いていたいと思うし、
容姿だけでなく性格も、素直で優しくて可愛い、天使みたいな妹。
────お姉ちゃんが、悪い虫から守ってあげるわ。
「天音、ついて来て頂戴。」
「どこまで?」
「西凛よ。使えない番犬にお灸を据えに行きましょう。」
ひらりとスカートを翻し、私は生徒会室を後にした。