プリキス!!
「烏丸先輩がわざわざいらっしゃるということは……昨日の件ですよね。」
音楽室の隣の工芸室に入るやいなや、橘君はすごい勢いですみませんと謝罪をしてきた。
そんな橘君の様子に、天音も私も目をパチパチとしてしまう。
というのも、
“昨日の件”に全く覚えがないから。
(それでも……初伊絡みなのは確かね。)
「ええ、そうよ。きちんと説明して頂戴。」
敢えて私は鎌を掛けてみる事にした。
すると、橘君から聞かされたのは驚愕の事実。
「……今……何て言ったの?」
「……初伊が襲われたって?!」
頷く橘君。
正確に言えば襲われかけたですけど、と言うけれど、もう私の耳にも天音の耳にも入らなかった。
「何処高だ?」
「東榮です。」
考えたのは、隠飛羽一荒れている筈なのに、東西南北で一番綺麗な校舎。
荒れている高校は荒れている校舎をしている方が、まだ良い。
気味が悪いほど綺麗で真っ白なあの校舎が示しているのは、
校内の統率がかなりしっかりしている……総長に絶対服従しているという事。
それはまるで軍隊。
「「厄介(だ)ね。」」
「西なら橘君や西巴がいるし南も……吉良と言う最終手段がある。北もまぁ、不本意だけど繋がりはあるわ。……けれど、東にはまったくコネがない。」
「東の東麻美琴に兄弟はいないし、親類縁者も隠飛羽にはいなかった筈。その辺から弱みを掴むことも不可能……。」
「あとこれは、恵から聞いたんですけど東榮の不良達、烏丸の事を“カラスちゃん”って呼んだそうなんです。」
「たまたま可愛い子を狙われたって訳じゃなさそうね。」
「これからも、狙われる可能性がある。」