プリキス!!
もう、頼るしかないわ。
橘君、と私は彼の方をじっと見た。
『私がいる限り、あの子にもう辛い思いは……絶対にさせません!私が初伊を守ってみせる!!』
そう天に誓ったあの日を思い出して、私は頭を下げた。
「……この問題が片付くまでの間、放課後初伊を西凛に連れていくことを許可します。だから……あの子を守ってくれない?私が家にいない間、何かあったら私、自分を一生許せないわ。
帰り道は橘君と西巴で守って帰ってくれないかしら。……お願いします。」
頭を上げて下さい!と声がして、顔を上げると眉を下げた表情の橘君がいた。
「えっと……あの、勿論です。烏丸は大丈夫ですから、悪い事は起きませんから……そんな顔、しないでくたさい。」
……そんなひどい顔してたかしら。
天音がぽんぽんと私の頭を撫でた。
さっきまで抱えていた気持ちがすうっと楽になった気がした。
「ありがとう。よろしく頼みますね。」
さて、そうと決まったら、初伊に着替えて西凛に来てもらわなきゃ。
私が迎えに行きましょう。
今日はまだ朝しか初伊に会えてなくて、初伊欠乏症気味なのよ。
「今初伊は家よね。電話してみましょうか。」
ポケットからスマホを取り出そうとした手を、天音に掴まれる。
頭の中は、クエスチョンマークでいっぱいだ。
「……あ、あー……えーと、志乃?」
「何?」
「初伊は今、出れないと思うなぁ。」
「何故?」
「……南城夜白と、出掛けてるから?」
「「え?!」」
同じく驚きの声をあげたのは橘君。
彼も知らなかったようだ。
私は天音の制止を振りきって、電話を掛けた。
七コールの末、はいと気だるげに出た相手は、家出をした弟。
「もしもし。あなたの所の総長に繋いで頂戴。」
総長なら、あおちゃんと出掛けたみたいです、と言う声が電話の向こうからして。
「夜白は今出掛けている。」
「……吉良君、あおちゃんってだあれ?」
「……青沼葵だ。」
「烏丸初伊でない事を祈ってるわ。」
そうして一方的に電話を切った。
……あの子は本当に……
厄介なのに好かれる。