プリキス!!
*
「良かったの?」
帰りの車の中で、天音に聞かれた。
「橘行成も、西巴恵も、危険人物だよ?そんなのに初伊を任せるくらいなら、生徒会に入れればいいじゃないか。」
分かってるわ、と返事をした。
「私があの子を預けたのは、橘君がいるからよ。」
「……マフィアに繋がりがあるけど。」
「でも橘君は、初伊を害したりはしない。決して。」
『烏丸先輩。俺、橘行成と言います。烏丸初伊さんの友達になりました。』
初伊が中学校に入学してすぐの夏、廊下で呼び止められて言われた言葉。
初めは、烏丸と贔屓にしたいというアピールかと思ったけれど、違った。
「家は、所謂マフィアです。」
「……は?」
「でも烏丸に迷惑は決して掛けません。掛かるようなら距離をおきます。だから、仲良くするのを許してください。」
「……。」
馬鹿みたいに真面目な表情で、頭を下げた後輩の頼みを、無下に断る事は出来なかった。
「それにね、初伊はあの子達といると、凄く楽しそうに笑うの。」
『お姉ちゃん聞いてー。恵がね───!』
くす、と思い出し笑いをしていると、天音がその様子を見て、少し拗ねたような表情をして。
「要するに、シスコン?」
「そんなところね。」
「なんだか……初伊が最大のライバルだよね。」
「なら、初伊より夢中にさせれるよう、頑張って頂戴?」
少し悪戯めいて笑いあう、そんな夕陽が綺麗な夕方だった。
side志乃 end