プリキス!!
また無言になった空間に、今度は私から話題を振ってみる。
「夜白。私、これでも根っからのカナ女生なんだよね。
不良と関わる道は避けてうまくやってきたの。他の東西南北女子達みたいに格好いーとか憧れるーとかは無くて。」
だろーなぁと夜白は生返事をする。
「でも、うっかり昨日西と南に関わったら……皆割と良い人だったんだよね。」
思ってた不良のイメージとは違った。“烏丸さん”とか“あおちゃん”とかさ……随分フレンドリーな不良達。
やってる事も、普通の高校生のように馬鹿みたいな事ばっかだし。
ここは隠飛羽じゃなくて、何処か普通の街の高校なんじゃない?って錯覚する位、肩の荷が降りて楽しかった。
「勿論、東は怖いよ。でも……人は見かけによらないんだねって思いました!」
一人で話しすぎちゃったと焦って夜白を見れば、その表情はほんの少し怪訝そうで。
「何その歳で悟ってんだ?」
「なんか、胸の内を誰かに話したいときってあるじゃない?」
こうさっ、近くにいる人に打ち明けたいって時!と身振りをつけて説明すると、
夜白は遠い目をして、俺には分かんねぇと呟く。
「俺は総長だから、胸の内は誰にも聞かせねぇよ。」
「吉良にも?」
「吉良にも。」
窓の外を眺めながらそう応えた夜白の横顔がほんの少し陰って見えた。
「同じ総長でも、ぜんっぜん違うね。夜白と恵。恵は考えてる事全部言ってるんじゃないかってくらい喋ってるよ。」
恵は本当少しは夜白を見習えばいいと思う。
「ね、初伊、聞いて聞いて。昨日考えたんだけどさ、俺が初伊をカナ女まで送るよ!そしたら一緒にいられる時間が伸びるし男よけにもなるし。どう?名案じゃない?」
「却下。」
恵、私の耳が痛くなるんじゃないかって位まで喋り尽くすもん。
「それは……お前にだけだろ。俺が会った時の西巴は静かで殺気立ってて、橘同様何考えてるか分かんねぇ奴。でも……幸せだな、西巴は。自分の胸の内を言える奴がいて。」
ちょっと切なそうな顔をする夜白を私は、一人で君臨する百獣の王にはもう見れない。