プリキス!!






「……夜白は虎みたいと思ったけど、猫だ。」


「猫?」


「そう。気高くて、飄々としてるけれど、猫は必ずつがいに出会えるよ。だから夜白も、心を許せる人にきっと出会える。」


寂しがり屋の優しい猫を放っておく人はいないもん。




夜みたいな真っ黒の瞳が私をじっと捉えているから、何を言われるかと構えて待っていれば、




「……お前って……変な奴。」


「変はひどいよ?言っとくけど私よりも変な人は隠飛羽中にい……」





突然ざわめきだした店内。

それに反応して、私も夜白も店内を見渡す。




「やばくない?めっちゃ可愛い。」

「ちょ、あんま見たらよくないよ。」

「……ジャニーズみたーい。」




聞こえくる会話の殆どがそんなものだった。


自慢の2.0の視力で見てみれば、店に凄く可愛い学ラン姿の男の子が入ってきたみたいで。

確かにかわいらしい顔をしてる。


でも、気になったのはそんなことじゃなくて。





「夜白?……あれ、一人、東榮……のバッチ付けてない?」


「よく見えるな。……どんな奴だ?」


「二人組でー、金髪の可愛い男の子と、茶髪に黒縁メガネの「出んぞ。」




食い気味にそう言った夜白は立ち上がり、財布から5000円札を出して机の上に置いた。





「……夜白?注文は?」


「後でコンビニで野菜ジュース奢ってやる。それと……初伊、これで顔隠せ。」




バサっと頭の上にかけられたのは景南のブレザー。



「タチ悪ぃ。よりにもよって入口の席かよ。……離れんなよ。」


そして急ぎ足で夜白は私の右腕を取って歩き出した。




「お、お客様、お帰りですか?ご注文の品は……?」


「急用が出来たんで。代金、机に置いてきました。」

「すみませんっ。」




そして、店から出ようとしたその時、ぱしっと左の腕が掴まれた。



「ねーね、君……南城君の彼女?」



振り向こうとした私を強引に引っ張った夜白。


もたれて転びそうになったけれど、夜白の背中がストッパーになって回避出来た。



「酷いよ、南城君。僕が入って来たら店を出るなんて。取って食ったりしないよ?」


「……近寄るな。虫酸が走る。」





……あの、人を挟んで喧嘩をするのはやめてほしいんですけど……。


取り敢えず凄く険悪なこの場から離れるためには掴まれたまずは左腕を解放してもらわなければならない訳で、ブンブンと腕を強く降るけれど、全く離してくれる様子はない。



それどころか、肩をぐいっと引き寄せられて、可愛い顔の男の子に寄りかかる体勢になってしまって。


……目が合った。





「南城君が一生懸命隠してた顔、見えちゃった。……で、南城君の彼女?」

「違います。」



答えると、やっと手を離してくれて。



そうしてようやく私達は店を出たのです。




「……またね、烏丸初伊ちゃん?」



店の中では、悪魔が天使の顔で微笑んでいるのなんて知らずに。





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