プリキス!!
「姉貴……。何の用だよ。」
「言ったじゃない。妹の危機だって。」
一回で聞き取りなさい、馬鹿。
電話の向こうの姉貴は、呆れ声で言った。
「妹……って……初伊が、どうした?」
「あら。妹で初伊だって分かるなんて、まだまだ兄貴面してるんじゃないの。」
姉貴に苛立って電話を切りたくなる衝動に駆られるが、それを抑えたのは“妹の危機”という言葉だった。
「……で、初伊がどうしたんだよ。」
「ポカリスエット持参。」
は?と思わず声が出た。
ポカリ……スエット……?
「ポカリスエット持参で、うちに来なさい今すぐに。」
「どういう事……」
姉貴からの返事はなく、ツーツーツーと無機質な音が残るのみ。
─────切られた。
「初伊が、どうしたって?」
一部始終を見てた夜白が聞いてくる。
どうしたって言われても、俺もよく分からないんだよ。
「……なあ。お前がポカリスエットが飲みたい時って、どんな時だ?」
「……あ?」
分からねぇよ、と夜白も俺もお手上げで。
取り敢えず近くの自販機でポカリスエットを買い、あの家に向かった。
俺があの日、出ていった家。
初伊を傷つけたあの日に……。