プリキス!!








「ねぇ……誰の声?ちょっと見て来て。」




西凛高校本校舎の横にある、少し古い旧校舎の芸術棟は西校連盟の本部であった。



この旧校舎、見た目はアンティーク調で美しく、教室も多い。



放課後や土日は勿論、授業をさぼる場所としてもこの校舎は使われていて。

常にここには西校連盟に所属するヤンキー達がたむろしているのだ。




だがここには大きな二つの欠点がある。




一つは冷暖房が完備されていないこと。

もう一つは、声が物凄く響く事。




西校連盟の姫は、音楽室の大きなソファーで横になっていたが、不機嫌になった。


この芸術棟にいる女は自分1人であるはずなのに、女の声が聞こえてくると。







「あ……あーあー……ね、猫が迷い込んだみたいで。」


「ねこぉ?見てこよっと。」


「い、いやいやいや、汚いですから!宮前さんに見せられるものじゃ……。」






こんなもの見せられるか!





西凛高校一年 西高連盟所属の橋川は頭を抱えた。


遠くに見えたのは、いつもはほぼ無表情の総長の笑顔。

それから、よく知らない女生徒が総長の隣にいたからだ。




「うわーん……ついに……西凛の校舎に入ってしまった……。」


「旧校舎の芸術棟にはヤンキーしかいないよ。」


「私ヤンキー怖いんだけど。」


「俺ら、ナンバー1と2なんだけど。」




行成さんが、超楽しそうだ。


「ほんとに恵がトップなんだねぇ……。」


女の子は、総長を見て頭を下げるヤンキー達を見て感慨深そうに言った。




「何か……凄いね。」


「見直してくれた?」


「………ちょっとだけ。」


「初伊。」


「なぁに?」


「可愛い。」


「知るか。」





総長の様子が、変だ。


天変地異の前触れと言っても過言ではないと思う。


あの冷淡なポーカーフェイスが崩れるなんて。


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