プリキス!!
*
「ねぇ……誰の声?ちょっと見て来て。」
西凛高校本校舎の横にある、少し古い旧校舎の芸術棟は西校連盟の本部であった。
この旧校舎、見た目はアンティーク調で美しく、教室も多い。
放課後や土日は勿論、授業をさぼる場所としてもこの校舎は使われていて。
常にここには西校連盟に所属するヤンキー達がたむろしているのだ。
だがここには大きな二つの欠点がある。
一つは冷暖房が完備されていないこと。
もう一つは、声が物凄く響く事。
西校連盟の姫は、音楽室の大きなソファーで横になっていたが、不機嫌になった。
この芸術棟にいる女は自分1人であるはずなのに、女の声が聞こえてくると。
「あ……あーあー……ね、猫が迷い込んだみたいで。」
「ねこぉ?見てこよっと。」
「い、いやいやいや、汚いですから!宮前さんに見せられるものじゃ……。」
こんなもの見せられるか!
西凛高校一年 西高連盟所属の橋川は頭を抱えた。
遠くに見えたのは、いつもはほぼ無表情の総長の笑顔。
それから、よく知らない女生徒が総長の隣にいたからだ。
「うわーん……ついに……西凛の校舎に入ってしまった……。」
「旧校舎の芸術棟にはヤンキーしかいないよ。」
「私ヤンキー怖いんだけど。」
「俺ら、ナンバー1と2なんだけど。」
行成さんが、超楽しそうだ。
「ほんとに恵がトップなんだねぇ……。」
女の子は、総長を見て頭を下げるヤンキー達を見て感慨深そうに言った。
「何か……凄いね。」
「見直してくれた?」
「………ちょっとだけ。」
「初伊。」
「なぁに?」
「可愛い。」
「知るか。」
総長の様子が、変だ。
天変地異の前触れと言っても過言ではないと思う。
あの冷淡なポーカーフェイスが崩れるなんて。