プリキス!!
部屋に入って家具を触ってみたけれど、
埃なんて全くない。
本当に出て行った時のままで、
自分は昔のように、家に帰宅したんじゃないかと錯覚するほどだった。
初伊にも姉貴にも嫌われて当然なのに、俺がいなくなった後の部屋を掃除してくれている。
……俺は、あいつらを傷つけた。
だから、どうこう言う資格はない。
けれど……
嬉しいと悲しいがぐちゃぐちゃに混ざったような複雑な気持ち。
名前に出来ない気持ちになり、どうすればいいか分からなくて、部屋の真ん中で暫く立ちつくしていた。
「初伊、入るぞ。」
初伊の部屋に入ると、初伊が眠っていた。
頬が少し赤いな。
熱は、どれくらいか。
初伊の髪の毛をかきあげて、額と額を合わせる。
……熱い。
濡れタオルを作ろうとキッチンに向かったが、幸運にも冷蔵庫の中に熱さまシートを発見したので、それを初伊の額に付けた。
「ん……。」
それが冷たかったのか、閉じていた瞳が少しづつ開いて。
「大丈夫か?」
「へーき。」
平気な訳ない。
そんな涙目で、辛そうな顔をして。
そうやって、いつも辛いときほど隠すだから─────
「嘘だな。平気じゃない時は意地張んな。」
────いつまでも、放っておけないんだよ。