プリキス!!
突然はっとして、俺の名前を叫んだ初伊。
「喉渇いてないか?」
「いや……え、何でいるの?!」
姉貴に呼ばれたことを言えば、訝しげな表情をして。
そんな初伊に俺はコップにポカリスエットを入れて手渡した。
ごくごくと、美味しそうにそれを飲む姿はまるで小動物のようで愛らしい。
兄と妹の関係でなくなった今、無闇にこいつに近づく事は出来ない。
昔のように、同じベッドで顔を合わせて眠る事も出来ない。
そう思うと、その姿を目に焼き付けたくて、俺はじっと初伊を見ていた。
「吉良さーん……なにー?」
俺が“兄”を消した。
それなのに、本当に俺は身勝手。
“吉良”と呼ばれる度、胸の奥がチクリと痛むんだ。
ごめんな。
妹1人守れない、弱い兄ちゃんでごめん。
謝罪の言葉は、紡がれ続けて止まることはない。
ごめんと口にだして、初伊に許される事も俺は許せない。
だから、頭を撫でた。
ごめんの代わりに。
「昼、何食べたい?」
そう聞いたけれど、食べたいものはあれだな。
初伊が病気になった時はいつも、烏丸本邸のメイドが卵粥を運んでいた。
「お嬢様が食べたいとおっしゃるので。」
そう言っていた記憶がある。
夜白が料理が出来ないため、一緒に住み始めてから料理の腕が上がったので卵粥くらいは作れる。
完食するような美味しいやつを作ってやる。
そう身構えていたけれど、初伊が望んだのは食パンだった。