幼なじみは恋ドロボー!!
その場に残された二人。
最初に口を開いたのは陽翔。
『なぁ町屋、さっきのって何?』
真剣な表情で町屋を見つめる陽翔。
『あぁ、実は松崎さんにずっと気になってるって言ったんだ。』
それを聞いて陽翔の表情が一瞬強張る。
その一瞬に気付きながらも町屋は続ける。
『松崎さんに聞いたらお前ら付き合ってないんだろ?俺が松崎さんの彼氏に立候補する権利はあるだろ?だから俺の気持ちを伝えたけど、見ての通り返事は保留。』
『お前、陽菜のこと本気なのか?』
陽翔は真っ直ぐ町屋を見る。
『本気だよ。だからただの幼馴染み止まりなら俺の邪魔しないでくれよ』
『なっ!』
そう言って陽翔は町屋の胸ぐらを掴む。
町屋は胸ぐらを掴んでいる陽翔の手を掴んで続ける。
『ずっと好きでも松崎さんに伝わらなきゃ意味ないだろ?告白もしないでただの幼馴染みにしか思って貰えないお前に俺と同じ土俵に立つ権利あんの?』
陽翔は言い返す言葉も見つけられず町屋の胸ぐらから手を離す。
『とにかく、俺は松崎さんのこと本気で好きだ。お前が今のままでいるなら遠慮なく松崎さんは貰うから』
そう言って町屋は校舎に向かって歩き出す。
その後ろ姿を悔しそうに見つめる陽翔。
『くそっ!何でだよ!何で…』
陽翔は苦しそうに呟く。
幼馴染みという壁が壊せない自分が情けない。
しばらく陽翔はその場に立ちすくんでいた。