指先カウントダウン
びっくりして、思わず手を引っ込めてしまう。



落ちそうになったクレープを、佐倉くんが慌てて持つ。




「おっと、危ねっ!…桜野さん…?」






どうしよう。


どうしよう。


やっちゃった、変に思われたかな…。


避けたって…思われるかな。


ごめんね、佐倉くん、びっくりしたよね…。




「…大丈夫?ほら、向こうのベンチで食べよっか!」



佐倉くんがまたクレープを差し出してくれる。

今度は、手が触れないように上の方を持って。




ごめんねって思いながら、私はクレープを受け取った。



「ここのベンチ、なかなか空いてないんだよなー。座れてよかった!」


「…うん」




そのあともちらちらと会話をしたけれど、佐倉くんはさっきのことについて決して触れてこようとはしなかった。





佐倉くんとお話しをして、寄り道をして。



良いことばっかりの放課後だったけれど、何か心にひっかかる。





もっと、佐倉くんと仲良くなりたい。


けど。


そのためにはいつか、話さなきゃいけない日が来るんだと思う。






私の病気について。
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