指先カウントダウン

火曜日の約束

「ごめんごめんごめんごめんっ!!!」


朝、中学時代から変わらない待ち合わせ場所で菜々華を待つ。


走りながらやってきた菜々華は、開口一番にそう謝ってきた。



「…なぁに、菜々華の遅刻なんて今に始まった話じゃ」


「…それも、ごめん…なんだけどね」


「も」ってことは、他にもあるってこと。


すこしドキドキしながら菜々華の返事を待つ。


「…これから、毎週火曜日。生徒会の…会議があるの」


「だから?」


「だから…って、もう!意地悪しないでよ〜…」


「え?」


菜々華は意地悪しないでって言ったけど、私にはなんのことだかわからなかった。


純粋に、火曜日が生徒会会議だからってなぜ謝ってくるのかが不思議だった。


すると、そんな私の気配を感じとった菜々華が、じーっとこちらをみてくる。



「…え、本当に言ってる?」


「うん?」


「だって、毎週火曜日会議で遅くなるから、これからずーっと火曜日は一緒に帰れないんだよ?」



あ、そういうことか。


ただでさえ友達を作るのが苦手な私が、同じ方面で火曜日一緒に帰れるような友達をすぐに作れるとは菜々華も思っていない。


だから、私が一人になるのが申し訳なくって謝ってきたのだろう。


そしてそんなこと私にとってはまったく問題ないことだったけど。



「…菜々華ひどい。毎週火曜日に一人で帰らなきゃいけないとか」



朝の待ち合わせにいっつも遅れてくる菜々華に、せっかくだから仕返しをしてやろうと思う。



怒ったようにぷいっと顔を背けてみる。



「うううごめんね本当ごめんね、咲?咲ってば〜!怒ってる?本当ごめん!許して許して許して今度イチゴチョコホイップおごるから」



思い通りの反応だった。


菜々華は、遅刻もするし単純だし宿題も良く忘れるけど。


すごくすごく優しいから。



「…ウソウソ、怒ってないよ。私は全然平気だから、生徒会頑張ってね!心配してくれたんだよね、ありがと」



一人で帰らなきゃいけないのはほんの少しだけ寂しい気もしたけれど、きゅっと口を結んで嬉しそうに笑う菜々華をみたら、それくらい大丈夫って思える。



「ありがとね、咲」


「ううん。…あ、時間!」


「やば、遅刻する!ダッシュね!!」



走る菜々華の後ろを追いかけるように私も走った。
< 26 / 27 >

この作品をシェア

pagetop