指先カウントダウン
「間に合ったあああ」


教室につき、菜々華がはぁっと息を吐くとちょうどチャイムがなった。



「じゃあ私は席につくね。また後で、菜々華」

「うんっ!」



バタバタと席に着くと、ちゃんと変わらず前にある金色の頭。


今日こそは、絶対に私から挨拶をする。


心の中でおはようを唱える。



「さ、佐倉くん!」

名前を呼ぶと、佐倉くんはくるっとこっちを向いて、あの眩しい笑顔で笑った。

「桜野さんだー」




すうっと深く息を吸い込む。





「…おはよう!」


言えた。しかもちゃんと私から。

目標達成。

昨日できた心のつっかえが少し取れた気がする。



「…ん、桜野さんおはよ!」


佐倉くんはちいさく驚いた後、今度は穏やかな笑顔で私を見て挨拶を返してくれた。


こんなに挨拶を心地よく思ったのは久しぶりかもしれない。


しばらくして、担任の先生がクラスに入ってくる。


その後のHRで先生が話した話は、全部私の頭上を通過していった。






今日わかったことは、勇気を出せば挨拶ができること。



そして、佐倉くんの笑顔にはたくさん種類があること。



もっと、たくさんの笑顔を見てみたい。

どんなときにどんな風に笑うのか、もっともっと知りたい。


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