† トータル †
「大丈夫ミカちゃん」
「はい・・・もう大丈夫です」
誰もいなくなったスクリーン5の部屋を出ると、清掃員らしいおばさんが、お怒り気味で立っていた。
私が会釈しても何もおばさんは返さなかったけど、智也くんが会釈をすると、おばさんは顔を真っ赤にして、にこやかに返していた。
何なのよ、あの違いは。
「ミカちゃん、どこか座る?」
「私は大丈夫だよ。
ただ、オレンジジュース飲み終わっていないから、飲んでも良い?」
「じゃあ座ろうか」
丁度椅子が空いていたので、2人で座る。
ストローに口を付け、飲んでいく。
「ゆっくりで良いからね」
「ありがとう」
優しいなぁ・・・智也くんは。
「ところで、随分泣いていたね。
そんなに感動した?」
「うんっ!
来て良かったよ!
智也くん感動しなかった?」
「感動したっていうか・・・。
あのタカシって少年が、クミコちゃんを諦めなかったのが凄いと思った。
僕だったら、どうなっていたのかなって、思ったね」
「私がもしクミコなら・・・。
諦めたくないかな・・・。
でも、家系が泥棒なら、しょうがないのかなって・・・」