† トータル †
「織子自身を見ていないではないですか・・・」
“道具”として、織子に接していることと同じだ。
「妻は・・・智子は?」
「あぁ、自殺した」
「自殺っ・・・?」
「しかも、織子が見ている所で、だ」
「どうして・・・」
織子が見ている前で?
「教えたかったんだろうな。
社会が厳しいことを」
「社会が、厳しい・・・?」
「智子さんは、君と離婚した後、織子を養うため、働いた。
しかし、どこへ行っても長続きしなかったみたいでね。
電気も水道もとめられている状況だったんだ」
初めて知った、智子と織子の生活。
俺の目から、涙が流れた。
「つい先ほど、織子から電話が来た」
「え?」
「友人を、綾部美果を探してほしいと言いだしたんだ」
「綾部美果・・・?」
確か、智也が今日一緒に出掛けた子じゃないか。
智也は、楽しそうに出掛けて行ったな。