† トータル †
「待て!トータル!!」
スーツの人が叫んだところで、背中に大きなリュックサックを背負う少女が何かを投げる。
警備員の足元に、白い球が転がる。
少女の投げたものだ。
「何だこれは」
「やめろ!拾うな!!」
スーツの男性の声も空しく、警備員は球を拾う。
途端に、白い煙が球から吹き出し、視界を悪くする。
スーツの男性はとっさの判断で眠らずに済んだが、警備員はほぼ全滅。
白い球が催眠ガスを出す煙玉だと、知っていたのだ。
それも、手に触れると弾けるものだと。
男性は急いで少女2人を追いかけるも、見事にかわされ、姿を消していた。
「くっそぉぉ!」
この美術館の絵画が盗まれるのは、今日で2回目。
2回とも煙玉によって盗まれていた。
少女たちは、美術館のダクトを通り外に出て、大きなワゴン車の天井に降り立った。
ワゴン車の天井にある窓を開け、走り出す車の上で、中へ滑り込む。
「「お疲れ」」
運転席と助手席に座る2人が微笑みながら声をかけると、黒い服を着た2人はハイタッチを交わした。