† トータル †
目覚めた先は、病院だった。
病室では、オレの家の事件が取り上げられていた。
犯人が警察に連れて行かれる映像が流れていた。
犯人の名前を、オレは知っていた。
顔が見えなかったから、見知らぬ男だと勘違いしたらしい。
犯人は、近所に住む大学生だった。
名門大学に通っていて、よく勉強を教えてもらっていた、近所のお兄さんだった。
1人暮らしのお兄さんは、凄く顔が良くて、優しくて、両親はよく家に呼んで、一緒にご飯を食べることも少なくなかった。
多分・・・オレの初恋相手。
それなのに・・・何故?
何故、オレらを襲った?
何故・・・オレだけ助けた?
テレビでは、動機も言っていた。
お兄さんには、付き合っていた彼女がいた。
しかし彼女は、お兄さんと別れた。
他に好きな男が出来たから、だと。
お兄さんは、それを聞いて凄く哀しんだ。
そして、決めた。
この世にいる全ての女を殺そう、と。
無理なことだとわかっていても。
暴走したお兄さんの純粋な恋心は、歪んでいた。
暴走したお兄さんがまず向かった先が。
幸せそうな、オレの家だった。