† トータル †
あの事件があってから。
オレはアンという一人称を変えた。
『オレ、アンちゃんのこと好きだよ?』
笑って、耳まで真っ赤にしながらオレに行ってくれたあの日を。
オレは忘れない。
女が、お兄さんを変えてしまったんだ。
なら、
オレは女なんてやめてやる。
お兄さんの望む人間になるんだ。
「あんなぁー!」
「ひさしぶりぃあんな!
げんきだった?」
目の前で笑うのは、美果と美雨。
美果と美雨の人生を変える出来事があるのは、もう少しあと。
「・・・ん、まあね」
「どーしたの?あんな」
「べつに?」
「おかしいよあんな。
なにかあったのなら、あたしにいってよ」
「オレはおかしくないよ」
前まで自分をアンだと言っていた奴が、いきなりオレと言いだしたんだ。
2人もちゅーりっぷ組にいた奴も、驚いてオレを見た。