† トータル †
私の頭をなでた美雨は、杏奈の部屋に入っていく。
杏奈が優しいこと、私は知っている。
素直じゃないから、あんな感じに言ってしまうだけ。
ひどく言われたからって別れるほど、私たちの仲は脆くない。
私は、さっきからずっと黙っている織子を見た。
無言で本を読んでいる。
「・・・織子、ごめんなさい」
「・・・・美果」
「何っ!?」
思っていたより更に冷たい声に、思わず驚く。
いつも静かで、感情を表に出さない織子だ。
怒らせると、1番怖いかもしれない・・・。
「何を謝っているのですか?」
・・・へ?
「織子、さっきの私と杏奈の会話、聞いていた?」
「聞いてましたけど?」
「・・・怒らないの?
智也くんと付き合ったこと・・・・」
「・・・ボクは美雨の意見に同意ですね。
あの状況では断れないでしょう。
杏奈はストレートですから、答えられるでしょうけど」
「そうなんだ・・・良かった」
ホッと、胸をなでおろす。