† トータル †
ユミコ姉ちゃんはあたしに、黒い服を着せた。
腕には、青いブレスレット。
「良いミウ。
あたしはこれからミウのこと、アオって呼ぶわね?
あたしのことは、アカって呼びなさい」
「待ってよユミコ姉ちゃん。
アオとかアカって何?」
「説明するより、見た方が早いわ」
あたしは当時5歳だったけど、深夜の街へと出掛けた。
赤いブレスレットをつけたユミコ姉ちゃんは、あたしの手を引きながら、足早に歩いて行く。
ユミコ姉ちゃんの他に、男子が4人、女子は5人いた。
着いた先は、大きめのビル。
首を思い切り曲げても、頂上が見えないぐらい大きい。
「ユミコ姉ちゃん、ここは?」
「アカって呼びなさい。
正体がばれると困るから」
「わかった・・・」
「ここは、××ビル。今から侵入するわよ」
「えっ・・・侵入?」
幼くて、意味が分からなかったけど、ユミコ姉ちゃんの口調から、危ないことだとわかった。
「アオは、絶対にあたしから離れちゃ駄目。
離れたりしたら、死ぬと思いなさい?」
「・・・わかった」
あたしは再度ユミコ姉ちゃんの手を強く握った。
ユミコ姉ちゃんは、「良いわよ」とマイクらしきものに向かって言うと、あたしの手を引いたまま、歩き出した。