† トータル †
ユミコ姉ちゃんの合図で、男子も女子もビルの中に入っていく。
あたしとユミコ姉ちゃんも入っていく。
そこからは、凄く怖かったのを、今でも覚えている。
黒い服に身を包んだ強そうな男性に追いかけられた。
社長らしき男には、ナイフを向けられた。
あたしはユミコ姉ちゃんの手を離さないよう、必死で走った。
何をしていたかわからなかったけど、じっとしていたら殺される。
それだけはわかっていた。
殺されたくはなかった。
一生懸命、泣きながら走った。
何時間たったのだろう。
あたしはビルを出た。
「大丈夫?怪我していない?」
「うぅっ・・・ひくっ・・・」
震えながら涙を流すあたしを見たユミコ姉ちゃんは、黙って抱きしめてくれた。
「怪我はしていないみたいだね。
さ、家に帰ろう?・・・アレ?」
ユミコ姉ちゃんは、行くとき一緒にいた男子1人がいないのを見つけた。
「ねぇ、ヨシオくんは?」
「ヨシオ、捕まっちゃった・・・」
ヨシオと言う行方不明の男子と共に行動をしていた男子が、泣きながら話した。