世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話

「お嬢様学校育ちのこの世間知らずが、どこで、男と知り合った? ん?」

 彼の舌はそのまま首筋をゆっくりとなぞり、私の耳たぶにとやってきた。

「……ん、やぁ」

「嫌だったら、正直に答えなさい」

「わ、私、隠してなんか……んっ、あん」

 彼は私の服のボタンを器用に、しかも素早く外していく。

「だ、ダメ、修一くん」

「何がダメ? 君は俺の婚約者でしょう?」

「そ、そうだけど」

「結婚するってのは、こう言うことをするって事だよ。知ってるよね、さくら。ん? 一体、何がダメなの」

 そう言いながら、彼の手は、ボタンを外した隙間から、胸元へと進入してきた。

「……ん、あぁ」

「さくら、愛してる」

 彼が私の唇をふさぐ。
 むさぼるように、私の舌を吸いながら私の胸をゆっくりともみし抱く。

「……あ、ん。だ、だから……」

「もう言葉はいらないよ、さくら」

「ああっ……ん」

 言おう言おうと思って口を開く度に、彼に言葉を止められる。
 しかも自分から聞いておいて言葉はいらないって何よ。そう思いながらも、思考はすっかり散漫になり、彼に触れられたところの熱さばかりに意識が向かってしまう。
 もう私の理性も限界だった。

 誘惑に負けて、何もかもゆだねて、彼に身を任せてしまうまで後数秒……というところで、ドアがノックされた。

 彼がハッとして私から飛び退いた。

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