世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話
一体どこに行くのかと思っていると、彼は来た道を5分ほど戻り、ちょっと派手な白亜のお城めいた建物へと車を進める。
「修一くん? ここって……」
「そう。ラブホテル」
車ごと敷地内に入る。
明るい地上から、そのまま真っ暗な駐車場に入って、目が慣れない。もちろん電灯もあるのだけど、とにかく薄暗い。
外から見たら、いかにも~な感じのラブホテル。小綺麗ではあったけど、シティホテルとはそもそもが違ってる。
黙って観察していたら、彼が意外そうに言ってきた。
「もしかして来た事ある、さくら?」
「まさか!」
「そう? 元カレとは?」
「プ、プラトニックだったもん!」
「へえ?」
知ってるくせに。だって、私の初めての相手は彼なのだから。
一通り私をからかうと先に車を降りて、彼は助手席のドアを開けてくれた。
「どうぞ、お姫様」
うっかりと出された手を取ると、彼は手の甲にキスをするふりをして、私の人差し指を口に含んだ。
「ヤダッ、もうっ!!」
こんなところで何するのよ、と怖い声を出すと彼は笑いながら私の腰を抱き、車から降ろしてくれた。
何だか妙にスキンシップが多い。普段、外ではそんなでもないのに。やっぱり、場所が場所だから気持ちもオープンになるもの?