世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話
「でも、大学は自由だったよ」
そう言うと、彼が私を抱きしめながら、くすくすと笑った。
「大学生で彼氏がいて、バージンってありえねーだろ?」
私が固まったのを見て、彼は私を抱きしめる手をゆるめ、前側に回り込んできた。
「え? 何? もしかして、付き合ってたのって、大学生ん時!?」
「大学生って言うか、高校生の終わりから」
彼が「まじかよ」って呟いた。
何よ、失礼ね。ほっといてよ。そう思ったけど、大学生で彼氏がいてプラトニックなままってのが、一般的じゃないってのは私にも分かる。実のところ、さすがの私も普通じゃないよねとは思っていた。
でも、お互いに初めてのお付き合い、お互いに超奥手だったんだもの。奥手同士のお付き合いだと、そういう事もあるでしょう? ってね、私、他に経験ないから分からないんだけどさ。
だけど、何人もの女性とお付き合いした(に違いない)経験豊富な彼とは、割とスムーズに事に至ったもの。やっぱりどちらかが積極的じゃないと、こう言うのって進まないものじゃない? なんて事をほっぺた膨らませながら考えていると、彼は私の髪を片手にもてあそびながら聞いてきた。
「ね、相手、何歳?」
「6つ上の大学院生」
「うっわ。何それ」
「ん? なあに?」
「もう社会人になろうかと言う年で、女子高生と付き合うか!? 犯罪だろ!?」
それって、ただのヤキモチ? それとも、一般論?
思わず、まじまじと見返すと、彼はばつが悪そうに目をそらせた。
「もしかして、40前で24のさくらと付き合ってる方が犯罪?」
急にシュンとして私を見る彼がやけに可愛く感じられて、愛しかった。