世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話
「どっちも社会人だもん。いいじゃない?」
「だよな?」
チュッとほっぺにキスをすると、彼は急に元気になって、私を軽々と抱き上げた。
思わぬ浮遊感に「キャッ」と小さな声を上げる。
「しながら、話そう?」
す、するって何を!?
と言いたいけど、彼が何を言っているかは私にもちゃんと分かっている。だから、もちろん聞き返すなんてできない。
って言うか、ここってラブホテルだよね。みんな、ホントにここで、エッチなことしてるんだよね!? このベッドの上で!? やけに生々しい映像が頭に浮かんで、私の頬はカーッと赤くなった。
だって、これまで、その手のコトするのは彼の部屋か旅先のホテルだったんだもの。今さらながらに動揺したって仕方ないよね?
何とか落ち着こうとしていると、彼はまた面白そうに私を見た。
「さくら、いやらしいこと想像したでしょ?」
にやにや笑って、彼はベッドに私を下ろし、そのまま覆い被さるようにのしかかってきた。
ベッドがキシむ音がした。
もう、やだっ。そんな事、イチイチ言わないでよっ。
「違うの?」
彼が私の唇を奪う。それから、答えを催促するかのように「さくら?」と私の名を呼んだ。
私の身体の横に突いた彼の長い腕。何を思ってか嬉しそうに細められた黒い瞳。
彼の顔はどんどん近づいて来た。大好きな笑顔に間近で「ほら、言ってごらん」と言われて、逆らえる訳がない。
「……違わない」
私が囁くような声で応えると、彼の手はじらすように私のブラウスをたくし上げた。