世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話
新たなる一歩
そして、早春の気持ちよく晴れたある日。
デートの時はラフな服装の彼。会社ではピシッとスーツを着こなし、クールビズでもネクタイをきっちり締める彼。
今日は、華やかな正装。
やっぱり素敵。背が高くてハンサムで、厳しいけど優しくって。そして、私の前ではまるで子どもみたいな彼。
そんな事を思っていると、彼はじっと私の目を見つめてきた。
「ねえ、さくら」
「なあに?」
「なんで昔の彼と別れたの?」
「え? ……なんて言った?」
私が目を丸くすると、彼はしまったと言うように頭をかいた。
「この前から、一体何を気にしてるのよ、修一くんてば」
私、そんなに変な態度取ってたかしらって、違う意味で心配になって来て、思わず聞き返す。
だって、彼は私の元カレを気にするけど、私は彼の元カノなんて、申し訳ないけど、まったく気にならない。
何しろ彼は今現在、私一筋だし、そもそも、私はあまり人に興味がない。昔ほど無関心ではないけど、誰かの過去を詮索して、言っても戻らない時間を追いかけようなんて思いもしない。
何より、当然私は彼一筋だ。それが伝わっていないのなら、そっちの方が大問題な気がする。