暴走族に恋した私
「仁は、俺が潰す。」
スルッ
手の中にあった袋の持ち手が、地面に落ちた。
落ちたせいで、話していた二人は私の存在に気づいた。
視線が私に向けられた。
「アンタ…。」
水瀬さんの視線が、痛く突き刺さる。
私はその視線を受け流すように、斜めの方向を向いて口を開いた。
「聞かざる、見らざる、言わざる。」
私は目を閉じて、口を噛みしめて、耳をふさいだ。
何秒かして、目を少し開けると。
水瀬さんと居た人は、背を反って声をあげ笑い出した。
横にいた水瀬さんは変な目で、私を見た。