暴走族に恋した私
「待て、準。」
準っていうんだ、水瀬さんの下の名前って。
こんな状況なのに、妙に納得している自分が居た。
「このことは、内緒な。」
男の人は唇に人差し指を乗せた。
口の端をあげて、話しはじめた。
「朔、俺の名前は朔な。」
「…さく?」
「あぁ、朔。」
目を細めて笑う朔と名乗る人は、優しげな声でしゃべる。
「またな、龍王のお姫様。」
手をあげて、朔という人は去って行った。
小さくなっていく背中を見えなくなるまで、目で追いかけた。
この人とは、きっとまた会うことになる…そう、なぜか思った。