暴走族に恋した私
「お疲れ。」
「うん、ありがとう。」
私は仁に近づくと、腰に手を回して力強く抱きしめた。
仁はそれに返すように、抱きしめてくれた。
「積極的だな。」
寒いはずなのに、こうしてると何故か温かく感じる。
仁から離れると、仁の顔をみた。
口の端は切れていて、ちょっと血がにじんでいた。
「いたい?」
そっと怪我した部分を触ると、仁は体を揺らした。
「別に、大丈夫。」
視線をそらして、私の手をそっと怪我の部分からどかした。
多分、話に触れてもらいたくないんだ。
私には言いたくない、何かがあるんだ…きっと。