暴走族に恋した私
「あのさ、」
風を横ぎる中、仁は口を開いた。
表情は見えないけど、少し口調は暗い感じがした。
「鬼乱の奴らは警察に、渡したんだけど」
「……それで?」
鬼乱と言う用語を聞くと、雄也さんを思い出す。
雄也さんも、警察に渡されたんだろうか。
「アイツだけ、逃げたんだよ。」
アイツって?と聞きかえそうとした。
でも、聞かなかった。
誰なんて分かってる、仁が言いづらくてワザと名前を言わないのも分かってる。
「ごめん、これから気をつけろよ。」
仁はそう言って、黙った。
私の頭には、仁のごめんって言葉が何度も流れた。