暴走族に恋した私
リビングからは、トントンと軽やかな何かを刻む音が聞こえた。
料理をしてる?
なんてことないよね、今まで料理しているなんて一度もなかった。
「お母さん……?」
半信半疑のまま、母を呼んでみた。
返事なんて、あるはずないのに。
「この声、由奈?」
あった。
久しぶりに聞く、透き通るような高い母の声。
私は恐る恐る、リビングの扉を開き中に入った。
そこには、少しやつれた母の料理をしている姿があった。
「ひさ、しぶりっ。」
母は喉に詰まった言葉を一生懸命、出した。
涙がじわっと浮かんだ。
想像と違う、そんな反応される予定なんてなかったから、涙が出ちゃう。