神様の憂鬱
「紗良奈」

声をかけてみるが返事はない。

反応すらない。

「紗良奈」

呼びながら肩をつかんでみる。

ゆっくりと、顔がこちらに向いた。

けれど、その目に映るのはボクではないようだ。

記憶の中の何者かが代わりに映っているのだろう。

表情が、微妙に変わる。

そして、また悲しみが支配する。

まるで彼女の中には、虚無の世界があるかのよう。

濡れた唇が、震えるように動いた。

それは音を刻むことはしない。

でも、ボクにはその言葉が聞こえてきた。

ボクらがするように、脳に直接。

――死にたい――――

< 102 / 200 >

この作品をシェア

pagetop