神様の憂鬱

天歌の教え

「おや、お早いお帰りで」

弦を爪弾く手をとめて、天歌が言った。

ボクは彼女の隣に腰掛けて、

「わからないよ」

と呟く。

「主様にでもわからないことがあるのですね」

おかしそうに天歌が笑う。

「ま、ね。ボクだってキミが思っているほど万能なわけではないよ。それに――」

「それに?」

「キミがボクから力を取り上げるから」

恨みがましく見つめると、

「勝負は勝負ですから」

ピンと弦を弾いた。

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