神様の憂鬱
澄んだ音色が、空気を震わせる。

夜の闇を彩るように、天歌が歌いはじめた。

その声は、この世界をやさしく包み込んでいく。

まるで全てのモノが聴きいるかのように。

ボクだって例外ではない。

目を閉じて耳を傾けていると、嫌なことだって忘れられる。

だからしばらくそのまま流れに身をゆだねていた。

けれど、天歌に聞きたいことがあったんだ。

早くしないと、紗良奈が起きてしまうかもしれない。

目が覚めてボクがいないと、心配するかもしれないから。

あんまり長居はできない。

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